みなさんは、Save The Children による母親指標 (Mother's Index) 「母親になるのにベストな国ランキング」でアイスランドが上位に位置づけられているのをご存知ですか?2007年から11年までの過去5年間、アイスラン ドはこの指標にて上位4位内に留まるという好成績をあげています。母親指標とは、164ヶ国における母親の状態を、産婦死亡のリスク率や産休・育休制度の 充実度、女性の教育、経済指標等からなる「女性指標」と子供の健康状態や就学率等からなる「子供指標」をベースに分析したものです。この指数で上位にランキングすることはつまり、その国では女性にとって子育てをしやすいことを意味します。

アイスランドでは、基本的に出産費用、健診料のほぼすべてが国の税金にて賄われます。そして育児休暇は通常9カ月。初めの3カ月は、父親、母親の両方が、そしてその後の6カ月目からは、両親のどちらが産休を選択できます。会社によっては1年間取ることができる場合もあります。そして親が出産前にフルタイムで働いていれば、休暇中、給与の80%が国から支給されます。学生の身であっても、支給額は異なりますが育児手当を受けることができます。国家がいかに出産を重要視しているか、経済的援助が充実していることからも、よく理解できると思います。

幼稚園の体験授業で、アーティストのアトリエを訪問。幼稚園では遠足以外にも、五感をはぐぐむイベントに子供たちを参加させています。 完成後は共同作品をバックに記念撮影。

実際育児休暇を取る大多数は女性ですが、それでもこのシステムを利用することが、決して女性のキャリアを損なわないことは、女性が仕事の復帰をしたときに、会社で同じポストが約束されていることからも分かります。

個人主義社会であるアイスランドでは、男女平等という観点からも、女性も社会での自分のキャリアをとても重要視します。仕事をすることによって収入を得ますので、家庭の経済にも貢献することができます。そうすると、男性も仕事を理由に育児から逃げるわけにはいきません。自然に(もしくは妻の圧力によって!)男性も家庭内の仕事に携わるようになってきます。男性が育児に参加することの利点は、最近日本でも男性が育児休暇を取るようになったことで、世間にもよく知られるようになりました。(まだ少数ですが!)家族の結束を固めるとともに、女性の負担を男性も理解するのは大切なことですね。

仕事復帰をしたい母親にとって次のステップは、子供の世話を日中してくれる施設を見つけることです。ターグマンマ(日中のお母さん)と呼ばれる個人のデイケアマザーや、公立の幼稚園など小さな子供を長時間預かってくれる制度があり、働くお母さんにとっては心強い味方です。

就学前の子供達は、基本的に日本の保育園と幼稚園が一緒になったような託児所で最長で8時間半預かってもらえます。ターグマンマは、認可を受けたデイケア マザーが自宅で子供を預かってくれる託児サービスです。費用は幼稚園よりも割高になりますが、まだ幼稚園に入ることのできない1歳半未満の子供を見てもらえるのが大きな利点です。子供の人数も比較的少なく、一人のデイケアマザーにつき5~6人の子供という割合になります。

しかしそれ以上に素晴らしいサポートは、近所に住んでいる自分たちの家族や親戚です。アイスランドでは家族が近辺に住んでいることが多いた めに、孫の面倒を夫婦の両親、または祖父母が見たりするケースは少なくありません。アイスランドの家族構成も日本のように基本は核家族ですが、それでも地理的な条件から、兄妹や両親から比較的簡単に援助を受けることが可能なのです。これ以上の安心できるケアはありませんね。

再び父親の育児参加について一言。日本と比べると父親の帰宅時間が早く、仕事の調整をしやすいので、仮に奥さんたちが残業しても、子供の世話を代わりに引き受けることは可能です。街を歩いていると、よく男性がベビーカーを押す姿を見かけますが、これはアイスランドに於いては、日常の光景の一コマに過ぎません。子供が体調を崩せば、男性も会社から数日間の休暇を有給で取ることもできます。職場を含め社会全体が子育てにとても協力的なのですね。これらの事すべてが出生率の高さ(女性1人あたり2.1人以上)と女性の就業率の高さに繋がっているように見受けられます。

バイキングの子孫の荒くれ男たちも育児に参加。アイスランドの男性は驚くほど子煩悩です。

またアイスランドの人々は子育てにかかる金銭的な面にあまり不安を感じていないようです。それは、2008年秋に始まった金融危機で失業率が記録的な数値まで上がったにも関わらず、その翌年にベビーブームが到来したという事実から分析できます。失業中に育児を終わらせてしまい、経済がまた上向きに なったら仕事に従事しようという、アイスランド人の賢明で前向きな選択がもたらした結果だったようです。

このようなシステムの枠組みは保たれつつも、しかし今現在アイスランドは経済再建の途中にあり、教育のみならず医療や様々な分野で予算が年々削減されるという厳しい状況が続いています。今現在レイキャヴィーク市では予算削減の一環として、幼稚園の統合・再編成を計画しています。この統合計 画の趣旨は、主に施設の合理化と人員削減が主眼になっているため、教職関係者は必然的にそれまで以上の数の子供の面倒を見ることになります。また2008 年から幼稚園教諭の資格が修士まで引き上げられたために有資格者の数が不足しており、無資格者やアルバイトがその頭数を補い、有資格者と同じような仕事を安い賃金で引き受けるという事態が起きています。2009年のベビーブーム以降アイスランドは、「合理化」された幼稚園に入れない待機児童が増加するという「不合理な」傾向にあるのです。

経済危機の最中には、確かに国家は支出を抑える政策や対策の遂行を最優先せざるを得ませんが、出産と育児休暇、または育児施設への国家の経済的支援は、本来大きな支出削減の対象になるべきではありません。女性の社会復帰を援助することは、ひいては国の税収を増やすことに繋がりますので、国としては決して損をすることではないのです。

また、女性にとっても仕事を持つことはとても重要です。社会に出ることで自己実現が可能になると同時に、社会に対する責任を持つことで、最終的には女性が隔てなく参加できる平等な社会実現の貢献に繋がるのですから。そしてそれは、次の世代を引き継ぐ子供たちへの大きな贈り物になるに違いありません。

「わあっ!虹だ!!」 新鮮な発見に、子供たちの目は輝きます。雄大な自然の懐で、適切な国家の援助を受けたアイスランドの子供たちはのびのびと育っていきます。金融崩壊後も、国民幸福度の高いアイスランド。本当の幸せは、経済成長率だけでは計れないのです。

 

(2012年2月)

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