旅の醍醐味といえば、訪れた土地でのそぞろ歩きではないでしょうか。時間が許すときは町をぶらぶらと歩いてみると、ガイドブックには触れられること のない地元の様子を垣間見ることができるかもしれません。しかもレイキャヴィークは世界の首都の中でも治安がよいことで知られており、リラックスして町歩きを楽しむことができます。そして幸か不幸か、日本語で書かれたアイスランドに関するガイドブックというものは数が限られているため、町の中には遠路はるばる現地にまでやってきた人のみが知ることのできる秘密のスポットが盛りだくさん。そのぶん散策のしがいがあるというものです。

さぁ靴の紐をしっかり結んでレイキャヴィークそぞろ歩きへ出発!

…と言っても、まったくのあてなしというのも寂しいので、「海とお魚」にまつわる町歩き、と行きましょうか。地球の北の果てに浮かぶアイスランドは、ご存知のように四方を海に囲まれた島国です。歴史的にも産業的にもアイスランドと魚は切っても切れない関係にあり、その様子が町のあちらこちらで感じられます。我々日本人にとっては、興味深いところではないでしょうか。

左:古きよき昔のアイスランド漁業の歴史をさりげなく紹介するモニュメント。
右:白夜のアイスランドに訪れるたそがれ時。ロマンチックな海辺の散歩はいかがですか。

では、まずはレイキャヴィーク市内は空港脇の海岸沿いの遊歩道から歩いてみましょう。レイキャヴィークの西南の海岸をぐるりと巡るこの道は、毎年8月のカルチャーナイトに開かれるレイキャヴィーク市民マラソンコースの一部にもなっており、日ごろから人々はジョギングや散歩を楽しみ、小さな子どもは自転車に乗る練習をしていたりと、レイキャヴィーク市民にとってはなじみの深い場所でもあります。特に白夜の5月中ごろから8月中ごろにかけての散歩時には 爽やかな潮風を頬に感じながら、波に揺れる海鳥が魚を求めて海にもぐる様子もしばしば見られます。またこの遊歩道沿いには、昔の漁業の様子を紹介するモニュメントがあります。魚を干す網や小さな小屋のみならず、近辺で水揚げされる魚のレプリカがあまりにリアルに表現され、説明の看板がなければ今でも使用されているのでは?と思ってしまうほど。

続いて空港の北側、西南の海からは徒歩30分ほどに位置するダウンタウンに行きましょうか。海沿いに輝くガラス張りのオペラハウス、ハルパ周辺には、巨大な漁船に加えて沿岸警備隊の巡回船が停泊しているのが見えるでしょう。アイスランドには軍隊がなく、戦争も経験したことがないという世界でも稀な歴史を持つ国なのですが、実は1958年から1976年にイギリスとの間にタラの漁業権を巡る「タラ戦争」が勃発したことがあります。漁業が重要な経済資源かつ国民の食料源であったアイスランドにとっては、まさに死活問題でした。イギリス海軍と鎬を削ったアイスランド沿岸警備隊は、アイスランドの海の守り神的存在と言えるかもしれません。

またこのエリアは一昔前まで石炭が水揚げされていたため、「Kolaport (石炭の港)」と呼ばれますが、すぐそばの「Kolaport Flea Market」と大きく書かれた建物では毎週末レイキャヴィーク最大の蚤の市が開かれています。中に入ると、天井を見渡してみてください。海で使用されていたガラスの浮き玉が吊るされており、海にちなんだ色々なものやレイキャヴィークの歴史を物語るような小物や絵がさり気なく飾られています。ヴィンテージレコードに衣類など様々な品物を売るブースのほか魚介類コーナーもあり、町の魚屋さんの店頭ではめったに見られない蟹に蛸、色んな種類の干し魚やヴァイキングなアイスランド人にとってお酒のおつまみに最適と言われるHakarl(発酵したサメ肉)なども試食販売されています。勇気のある方はぜひお試しあれ。でも、間違えても帰りの飛行機の中では蓋を開けないように。

左:おなじみスモークサーモンにはさまれたプラスチックのケースの中身は…。
右:サメ肉のお味はいかが?

たくさん歩いてお腹が空いたところで立ち寄ってみたいのが、ホエールウォッチング船が並ぶオールドハーバーから道路を挟んだところにあるオーガニックビストロ 「Icelandic Fish & Chips」。アイスランドを旅していると、魚料理が食卓に上るのはお約束。その調理法はグリル、または茹でるのが一般的なのですが、こちらのビストロではレイキャヴィーク近海で獲れる新鮮な魚をシークレットレシピの衣にくぐらせ、高温の油でカリッと揚げたフリッターで味わうことができます。約180グラムのタラ、メヌケ、オオカミウオに9種類のオリジナルソースの中からお好みの組み合わせを選べます。衣もソースも味付けはかなりの薄味なのですが、テーブルの上に置かれたアイスランド産天然塩をほんの少しだけつけて食べてみると、魚本来の甘さや食感が引き立てられます。

付け合せのサラダやオーブンベイクの皮付きポテト、ブロッコリーのフリッターにフライドオニオンはオプションですが、食後の胃もたれを恐れることなく色々と挑戦してみてください。個人差はあるかもしれませんが、これだけの油を摂取するにもかかわらず、食後の胃はまだまだ元気一杯なのです。私は勢い余ってアイスランドのヨーグルトに似た乳製品スキールで作られたデザートで食事を締めくくったのですが、これだけ食べたとは思えないほど元気に歩き続けることができました。その後ホエールウォッチング船に飛び乗っていたとしても、おそらく十分に楽しめたことでしょう。

左:魚は左から時計周りにとろけるような舌触りのオオカミウオ、しっかり身がしまったメヌケ、そしておなじみのタラ。パプリカ風味のオニオンリングがユニーク!
右:日本食好きなベルギーからの家族。まるでテンプラを食べているかのよう!と、その食感を表現していました。

以上お魚にまつわるレイキャヴィークそぞろ歩きですが、廻る順番は意識せず、行きたいところへぶらりと行ってみるのが通というもの。でも、海沿いの遊歩道そぞろ歩きに関しては、私個人としては実はたそがれ時もお勧めです。古い漁業のモニュメント越しに海を眺めていると、空の鮮やかな赤 みと海の青さのコントラストが、まるで古きよき昔にタイムスリップしたかのようなノスタルジックな気持ちにさせてくれるのです。あなたの特別な人と、手をつないで歩いてみませんか。


(2013年6月 P.)

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