アイスランドと新型コロナウイルス④

 

アイスランドでは、11月6日にこの冬の初めての雪が降りました。その後少し気温が戻ったものの、12月に入ると冬将軍は早速本領発揮、大寒波が国を覆いました。そのあまりの寒さに、アイスランドのエネルギー供給会社は、「室内の暖房を上げ過ぎないで」「換気も短く」「屋外ジャグジーのお湯の使用はやめて」とレイキャヴィーク市民にお願いしたほどです。夜はマイナス15度前後、日中もマイナス5度から3度。冬のアイスランドでは風が吹くと、あれよと言う間に体感気温はマイナス10度くらいまで下がります。

数日前から、寒波は少し緩みましたが、実はこのようなお天気は、更なる注意が必要です。気温が多少上がったところで、地平線にまったり留まる太陽には、降り積もった雪をすべて溶かす威力はありません。夜風が吹くや路上の溶け水は氷に変わり、朝には至る所がスケートリンクと化してしまうのです。車も人も、犬もつるつる滑ります。楽しそうなのは、子供たちだけです。

さてさて、お天気の話はこれくらいにして、今回はアイスランドのコロナ第3波のお話です。

上の写真:レイキャヴィーク街中のチョルトニン湖。辛うじて全面凍結を逃れています。越冬をしない野鳥たちの憩いの場。
下の写真:アイスランド民話に出てくるクリスマス猫。聞き分けのない子供たちをさらって、飼い主の女巨人・グリラのもとに届けます。親にはクリスマス前後の興奮した子供たちのしつけに一役買う救世者、子供たちには恐怖の的です。

アイスランドを含めたヨーロッパでのバカンスシーズンは、その後の国民には大変高くつきました。シャットダウンで疲れ切った人々には、夏の太陽が、あまりに魅惑的でまぶしかったのでしょう。人の移動とともに、ウイルスも一緒に旅をし、特に無症状の人たちを通して、ヨーロッパ内に拡がっていきました。

アイスランドでは、海外からの入国者には空港で1回、そして自己隔離5日後にもう1回と、2回のPCR検査が義務付けられていたものの、1回目の検査で陽性だったフランス旅行者が、決まりを守らずに夜のレイキャヴィークの街を遊び歩いたことから、第3波が始まりました。ヨーロッパでも冬の到来が一番早いのがアイスランドです。気温が下がるとともに、フランス株といわれる今回のコロナウイルスは、アイスランドを瞬く間に座巻し始めます。その後うなぎ上りに感染者は増え続け、10月17日には、10万人に290人という第1波を凌ぐ感染者が出てしまったのです。

経済との両立を模索して、コロナ対策の手綱を緩めていた政府は、11月から一気に方針を転換し、3月末のアウトブレイク時と同様に、人と人との接触を制限し始めます。至るところでマスクが義務付けられ、店の客数、レストランの営業時間、学校の生徒数などが制限、ジムやプールなども閉鎖されました。マスク着用と換気の重要度が見直されたのも、今回の対策の大きなポイントでした。それが功をなし、感染者数は11月下旬には10万人に対し約50人まで下がったのです。
アイスランドは今ではヨーロッパで感染者数が一番少ない国です。現在も11月に導入されたルールに大きく変更はなく、この政策は少なくとも1月中旬まで継続される見通しです。

飾りつけられた木の周りではしゃぐ子供たち。街中の多くの木が、このようにライトアップされています。この時期クリスマスプレゼントを買う人々に街中はとても賑わうのですが、今年の人出はかなり控えめ。

ウイルス感染の拡大を阻止する政策を打ち出しながら、アイスランド政府は、同時に予防接種への準備に怠りはありません。アイスランドはEFTAのメンバーで、あらゆる分野でEUとも足並みを揃えており、今回のワクチンもスエーデンを通して、すでに自国分の確保を済ませています。

厚生省は11月下旬、予防接種の優先順位を細かく決定、各市や村の保健所に実際の接種スケジュール作成を指示しました。ワクチンが1月に届き、すぐに接種を始めることができれば、恐らく3月末までには優先順位が一番低いグループの予防接種も終えることができるだろう、と言われています。ワクチンの種類によって、運搬や接種時の条件が異なるものの、地区の学校に地元の住民を集めての集団予防接種が一番効率的だと考えられています。また国民の95%が予防接種に肯定的な見方をしていることからも、接種は始まり次第、スムーズに遂行されるもののと期待されています。

イギリスでは、bubbleと言う呼び方をするコロナ禍の人数制限は、アイスランドでは、Jólakúlaと呼ばれています。これはクリスマスツリーに吊り下げる飾り玉のことです。上記の絵は、どのように10人を数えるか、その例えを説明しています。15歳までの子供(中学生以下)、またすでにコロナ感染をした人は人数に含まれません。

1年の中で一番大切なクリスマスの祝日も、今年は10人までしか集まってはいけないことになりました。通常クリスマス・年末の休暇は、アイスランド人にとって家族や親せきと過ごす団欒のとき。この祝日を楽しみにしているアイスランド人にとっては、大きな痛手です。ただ、ルールを緩めることによって何が起こりうるか、夏の経緯からも予想ができるうえ、ゲーム・チェンジャーの予防接種も目前です。それまで何とか感染率を抑えなければ!みんな我慢のしどころです。

それでは、ところ変わって日本の状況はどうでしょうか。現在のニュースを見ている限り、日本での予防接種は3月ごろから始まるようです。日本は2021年オリンピック開催を目指しているので、尚更コロナ感染の封じ込めに力を入れる必要がありますね。

いずれにせよ、今後の人の動きを考えたとき、予防接種の有無が、各国の出入国の条件になることは大いに考えられることです。集団免疫ができて初めて人の移動が従来に近い形に戻るとすれば、海外旅行の戻りは早くて秋ごろになるのではないかと思います。

それでは、健康に留意して、いいお年をお過ごしください。アイスランドからもみなさまの2021年がよい年になりますよう、心からお祈りしております。


(2020年12月 J. Sakamoto)

 

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