地熱地帯に位置するアイスランド国際空港に降り立ち、首都レイキャヴィークへ向かうバスに揺られること約15分。月面を思わせるアイスランドの広野に、モクモクと白い湯煙を立ち上らせる丘が見えてきます。世界最大級の広さを誇る露天温泉ブルーラグーンと、隣接するスヴァルスエインギ地熱発電所です。

広大なラグーンの後ろには、スヴァルスエインギ地熱発電所から吹き出る蒸気が見られます。

「アイスランド = ブルーラグーン」 と言っても過言ではないほど、アイスランド観光を語る上で最も重要と言えるのがこのブルーラグーン。温泉好きの日本人にとっては決してはずすことのできない観光スポットです。最近世界中のテレビでもよくブルーラグーンの紹介がされるようになり、各国からこの国を訪れる観光客の人気スポットとなりました。

ブルーラグーンはよく「温泉」という表現がされますが、実は日本でいう温泉とは少し異なります。

今から約35年前。2000メートルの地下から汲み上げた約240℃の海洋水を電力に変換し供給するスヴァルスエインギ地熱発電所で、変換後の冷めた温水を有効に再利用できないかが考えられました。そこで発電所の横に流し出されたできた温水の水溜まりを露天風呂として解放し、こうしてブルーラグーンは誕生したのです。今でこそ年間約40万人が訪れる国内有数のリゾート地となりましたが、一般に解放された1987年頃は、苔深く生す溶岩地質の荒野に湯気を立ち上らせて浮かぶ巨大な水溜りでした。更衣室は小さな小屋。ある意味、自然のままだったと言えるかもしれません。

日本の温泉と異なるもう一つの点は、ここでは入浴前に更衣室でシャワーを浴び、ブルーラグーン特製ボディソープでしっかり全身を洗い流してから水着着用で入浴すること。露天温泉というより野外温水プールという感があります。

左手の小さな建物では、ビールやアイスクリームが販売されています。ビールを飲みながらの入浴、もう天国です。

それにしても5000㎡の広大なラグーン内を600万リットルという途方もない量の青白い海洋水が満たしている様子は、荒野に広がる海のようでとても幻想的です。そして贅沢なことに40時間ごとに全体の湯が入れ替えられるのです。湯は約37度から40度に保たれていますが、所々に熱い湯が流れでる箇所があるのでご注意を。塩分を含んだ温水に身を任せ、深くなっている所や岩場に注意しながらゆったり歩いて自分好みの温度の場所を探します。バシャバシャと泳いだり、2種類のサウナに交互に入ったり、ビール片手に他の入浴客と井戸端会議と、あまりの心地よさに一日中のんびり浸かっていたい気分になりますが、実の所この広さと海洋水が予想以上に体を疲れさせてくれるので、そう長時間浸かれるものでもないのです。

ちなみに、よくあるブルーラグーン観光ルートは、

  • 空港からレイキャヴィーク市街への移動の途中に立ち寄る
  • 日中レイキャヴィーク市内観光の後、旅の疲れを癒しに行く
  • アイスランド経由で他国に旅立つ旅行客が待ち時間に立ち寄る

という具合です。

附属の湯治用のスパに滞在することもできますし、帰国の便が早朝の場合は、車で5分ほどの距離にあるホテルに滞在することもできます。旅の疲れの癒しを求めて訪れる場所という点では、日本で温泉へ行く感覚とよく似ています。

ミネラルたっぷりのシリカを肌にしっかり塗ってみました。

ブルーラグーン来たらぜひ試していただきたいこと、それは「顔に泥を塗る」。泥といっても真っ白な泥です。ブルーラグーンのその青白い神秘的な色の素でもある「シリカ」は、天然のミネラル分をたくさん含んでいるので、ブルーラグーンのお湯は皮膚疾患にも効用があります。ラグーンの底にも泥は沈んでいますが、わざわざ潜って取る必要はありません。サウナ近くにシリカを溜めた木の箱が設置されているので、それを付属の柄杓ですくって顔や肩にたっぷり塗りつけてください。塩分を含むので初めは少しヒリヒリするかもしれませんが、湯で流してしまわないように注意しなが ら5分~10分ほど放置。サウナ近くの打たせ湯で洗い流せば、お肌の違いを感じていただけることでしょう。湯煙にぽっかり白く輝いて浮かぶ自らの顔を思い浮かべると恥ずかしく感じられるかもしれませんが、旅の恥は掻き捨て、すべすべのお肌でお帰り下さい。

みんなでなかよくシリカを塗りあって、このあと記念撮影。とっても楽しそうなご一行でした。

アイスランドでは一般家庭の風呂場の蛇口からも温泉水が出ることがよくあるので、この国に住んでいるとブルーラグーンに行く機会が意外と少ないのが現実ですが、先日北欧を旅行中の日本からの友人達がアイスランドにも立ち寄ってくれたので、お供として久々に行ってきました。受付の長蛇の列を見て混んでいるのかと心配になりましたが、さすがに広大なラグーンに入ると全く問題がありませんでした。早速お目当てのシリカを顔に塗りたくり、まったりとお湯に漬かっていると、それだけでも日ごろの疲れが一気に吹き飛ぶようです。家庭の狭い浴槽に慣れてしまい、広大なブルーラグーンでしか味わえない開放感をすっかり忘れていました。友人達によると、たった数時間の入浴でもお化粧ののりが全く違っていたそうです。

今回は白夜の温泉でしたが、冬を迎えるこれからの季節は気象条件さえ合えばオーロラを楽しみながらの入浴も夢ではありません。どんな季節でもゆったり、まったり過ごせるブルーラグーンは、私のアイスランド旅行のお勧めスポットです。



(2011年9月 by P.)

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