Breska afbrigðið og eldgos í Geldingadölum 

昨年の秋からの導入された入国時とその5日後の再検査、検査と検査の間の自己隔離のおかげて、3月下旬まで、アイスランドは、人口10万に対し、感染者数25名以下と、コロナウイルスの感染拡大を抑え込んでいました。国内でのスポーツやカルチャーイベントも少人数ではあれ観客を迎え始め、小中学生や高校生の学校生活も、少しずつ元に戻りつつあったのですが…、残念!やはり英国型の変異ウイルスが、アイスランド国内でも増え始めました。この変異種は、すでにアイスランドでも国境での検査で見つかっていたのですが、感染者がいれば隔離、その感染者の追跡調査をして、この時期までは感染を許容範囲に押さえ込むことに成功していたのです。

今年の2月下旬から、今現在、アイスランドではシェンゲン条約を結んでいるEU/EFTA 地域以外からの観光客を受け入れておりません。(2021430日まで継続予定。ただし状況によっては延長も)EU/EFTA 地域からの入国者にも、上記の2回のPCR検査に加え、入国72時間前の陰性証明提出を義務付けています。コロナウィルスの変異種がヨーロッパ各地で大きな割合を占め、感染が再拡大するようになって、アイスランドでもこのように入国制限が厳しくなりました。さらに国内での変異ウイルスの感染の拡がりを受けて、政府は入国者全員をホテルに隔離させる処置を取り始めました。ところがこれが、海外から帰国したアイスランド人に大変不評で、数人が国のこの政策に対して訴訟を起こし、45日には地方裁判所は強制隔離を違法としました。この判決に不服なコロナウイルス・タスクフォースと政府は、最高裁判所に異議申し立てを行ったものの、最終的には、地裁の判決-現行の法律では個人を強制的に強制隔離ができない-が肯定された結果になりました。アイスランド議会では、法律の変更に動き始めています。

コロナウィルスとの戦いは、他国の例にもれず、アイスランドでも予防接種との競争です。約61.000人が少なくとも一度は予防接種を受けており、その中の約28.000人はすでに2回目の接種を終えています。(国民の約7%) 医療関係者、高年齢者が優先され、80歳以上の95%はすでに接種終了、現在70歳代の90%が接種を受けています。血栓を引き起こす副作用の恐れから、アイスランドでもアストラゼネカのワクチン接種が一時見合わされましたが、欧州医薬品庁からのワクチンと血栓の関係はないとの報告を受けて、使用を再開し始めました。

日本も、欧米のペースに比べると遅れはありますが、予防接種が始まりましたね。オリンピックも海外からの観戦者を受け入れない方針に決定されました。ただ、オリンピック開催そのものに対して、国民の80%近くが懐疑的な中、無理に催行をしてもいいかどうか、判断が難しいところです。また日本国内でも、アイスランドと同様、変異ウイルスの蔓延が報告され、第4波になるかどうかの瀬戸際です。

 

 

さてさて、今回は、3月19日から始まったアイスランドでの火山の噴火のお話をしましょう。

(写真:RÚV出典)

2021年3月19日の22時ごろ、781年ぶりに、レイキャネス半島で火山の噴火が始まりました。ここは、ケプラヴィーク国際空港やブルーラグーンなど、観光には欠かせない施設がある地域です。

昨年に続き、今年2月24日から、この地域では絶え間なく地震が続き、グリンダヴィークの村の住民たちは、神経をすり減らしているところでした。2つのプレートが生まれているアイスランドでは、地震はつきものです。地震は島のどこかで毎日観測されるにせよ、たいていそれは人の住んでいない山間部で起こり、実際に揺れを感じることは稀です。しかしながら、この地域では過去3週間に、小さな地震を含め、約5万回近い揺れが観測されました。レイキャヴィークでも、この地域でマグネチュード5の地震があったときは、多くの人が突き上げるような揺れを感じました。

この地震が地殻変動のために起こっていることは、専門家の意見も一致しているところです。震源地の多くはケイリール(山)から南西のファグラダルスフャトル(山)の地域です。GPSを使って、毎日エリアを観測していたところ、下記の地図にある赤の点線の場所(距離約7km)で、マグマが地下5キロの場所を移動していることが分かりました。この場所の下で、マグマが地表に上昇してきており、それが地下5キロという浅いところまで移動していたのです。地下に生息している大蛇が目を覚まし、ゆっくりと動き出したと想像してみてください。

過去のこの地域の歴史と、地球内部から上がってくるマグマの量が地殻下で15-20㎥/Sくらいであろうことから、噴火があっても、爆発型ではなく、地殻の弱いところから溶岩が流れ出るタイプになることが予測されていました。ただ、実際に起こる噴火はどこになるか、100%言い当てることは不可能です。昨年の地震の多くが、ブルーラグーンの南にあるソールビョルン(山)付近だったことから、ここだとブルーラグーンばかりか、近郊の村・グリンダヴィークにも被害がでると、住民たちは大変心配していました。

レイキャネス半島の地図。左上の赤丸がケプラヴィーク国際空港。レイキャヴィークは地図外。右上のはハプナーフョルズールの先。赤の切れ線がマグマが地下を移動している地点。 

(RÚV出典)



写真左下:ケイリール(山)。レイキャヴィークからも、見ることができる。
写真右下:ソールビョルン(山)。スヴァルツセンギ地熱発電所とブルーラグーンの北にある火山。(筆者撮影)

実際に噴火している場所。ファグラダルスフャトル(山)の東。赤枠の白字はアイスランド語で火口。約700-800mくらいと予想されていたものの、実際は180m.320日)の長さだった

(RÚV出典)

そのマグマが、地表から1キロ、500メートルと上昇を続け、とうとう319日に赤線のところで噴火を始めました。幸いその場所の南にゲルディンガダーリルという名の谷があり、噴出したマグマはここに流れ込んでいます。観測されている溶岩の量は、およそ5㎥/sほどです。谷が埋まるまでには数週間必要で、例え長く続いたとしても、この溶岩流がグリンダヴィークの村まで届くことはないだろう、という見通しです。

噴火が始まって以来、地震は激減しました。レイキャネス半島の地殻の変動が地震の原因で、火山はその過程の一部の現象である、というのが専門家の見方です。地殻に溜まっていたエネルギーが、噴火を機に多少一部解放された、と考えてもいいのかもしれません。ただ噴火イコール地震の収束には必ずしもならないので、引き続き近辺の村の人たちは警戒が必要なようです。

今回の噴火は、アイスランド史上、小規模の噴火で収まるだろうと専門家は見ています。このような比較的小さな噴火は、アイスランドでは “ツーリスト噴火” と呼ばれ、観光客を呼び込む機会になることが、これまでも多くありました。

今回もその例に漏れず、観光客こそコロナ渦で簡単には来れませんが、その分アイスランド人たちが噴火見物に押し寄せています。噴火の翌日の3月20日、21日は特に賑わい、まだ熱の冷めない溶岩の上に寝っ転がったり、フライパンでベーコンや卵、ソーセージまで焼いたり、まるでお祭り騒ぎ。日中はそれでもまだましですが、夜になると暗さと寒さに遭難しかかる人たちも出てきて、警察の災害対策本部や地元のレスキュー隊が出動し、40人ほど保護しておりました。

翌日22日は天候が悪く、この地区一帯を封鎖したものの、天候が回復した夕方ごろから、道路局が出動し、噴火を見に行く人たちが迷わないよう、また必要以上に自然を荒らさないよう、道しるべの杭を地面に打ち込んで歩道を整備し始めました。同日の夜、専門家たちが噴火現場の危険を説明するインタビューも放映されました。二酸化硫黄、二酸化炭素、臭いのない一酸化炭素がガスとして溶岩と一緒に地表に噴出されている、噴火口の周りの溶岩の壁も高くなればなるほど崩れるリスクが大きい、火口が今現在の場所から拡大する可能性があり、その予知は難しい、などです。そのように行かないことを勧める一方で、道路局は杭を打っているわけですから、一見すると矛盾しているようにも思えます。

しかしながら、これがまさにアイスランドです。行きたかったら行ってもいいけど、これだけは気を付けてね、と事前にリスク情報を開示して、あとは個人の決断に任せる。現場を封鎖してしまうのが、一見簡単に思えるのかもしれませんが、禁止すると必ず破る人が出てくるのも否めません。それを考えると、手綱はきつすぎても、緩すぎてもいけないようです。

ご苦労さまなのは、やはり警察とレスキュー隊の方たちでしょうね。ちなみに、今現在このエリアはその日の天候や現場での状況により、国の災害対策本部が入場の可否を判断しています。

3月23日午前中の様子。道路には2キロの車が数珠つなぎ。杭が打たれた溶岩台地を歩く人たち。

                          (写真: Hólmfríður Dagný Friðjónsdóttir 撮影/ RÚV 出典)

さて、みなさんには下記のリンクをご紹介します。これは、噴火現場に備え付けられたカメラで、1日中ライブで様子を見ることができるのですが、その録画の一部をアイスランドの国営テレビ局が編集したものです。3月21日12時半から22日の15時までの録音を、1分40秒くらいに早送りしています。
https://www.ruv.is/frett/2021/03/22/sjadu-hraunrennslid-i-geldingadolum-sidasta-solarhring?itm_source=parsely-api


そしてこちらは、新しい噴火口の様子を録画したもの。火口が4つになりました。
https://www.ruv.is/frett/2021/04/11/ognvaenleg-og-heillandi-fegurd-eldgiga-i-geldingadolum


他には、YouTubeにある、こちらのライブリンク。
https://www.youtube.com/watch?v=BA-9QzIcr3c

ご興味があれば、ぜひとも、ご覧になってみてください。皆さんがアイスランドにいらしたときには、ご案内できるスポットになっているといいですね。


(2021年4月 J. Sakamoto)

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