アイスランドには妖精が住むと言われています。実際に目撃した、と断言するアイスランド人もいたりするのですが、アイスランドの妖精は恥ずかしがりやなのか普段はなかなかお目にかかることができません。
ところが今の季節、夜空一面を舞台にその華麗な舞いを見せてくれる妖精がいます。それは光の妖精、オーロラ。でもやはり少し恥ずかしがりやさんらしく、そう毎日見られるものでもないのです。では、どうすればオーロラに出会えるのでしょう?

Guido Reni (1575-1642) 作「曙の女神アウローラを追う太陽神アポロ」
アウローラ(オーロラ)は、ローマ神話では創造性の光を象徴しています。

(画像出典: Wikipedia)

まず、オーロラはただ寒い日だから、といって姿を見せるわけではありません。
これは太陽の活動と大きく関係しています。太陽の黒点の周りで「フレア」と呼ばれる爆発が起こると「太陽風」が発生します。その太陽風は、オーロラの発 光の要因となるプラズマ粒子を含んで、地球に向かって吹きつけてきます。そして地球の磁力に引き寄せられ、大気中の酸素原子や窒素分子と反応しながら発光 し、オーロラとなって夜空に姿を現すのです。

そして北にさえ行けば見られる、というわけでもありません。
というのは、オーロラには気難しい部分もあるのです。地球の北極・南極周辺から発生する磁力線に沿って太陽風に含まれる粒子が運動することによってオーロラが楕円のリング状に発生し、緯度60度から70度あたりに「オーロラオーバル」を形成します。これは常に同じ場所にあるわけではなく、形、大きさ、場所を変えながら移動しています。そのため、アイスランドにても、はたまたカナダにいても、オーロラオーバルがその上空になければ、オーロラは見ることができません。またオーロラは雲よりもっと高い場所で発生するので、空が曇っていたり、反対に晴れていても月が明るすぎる場合も見えにくくなります。

左の写真(出典:Wikipedia):南極を囲むオーロラオーバル

こうしてみると、オーロラ鑑賞というのは難しく聞こえるかもしれませんが、実際そうとも限りません。特にアイスランドの場合は天気がめまぐるしく変わるため、曇っていた空が急に晴れてオーロラが出現することもあります。そして国自体が緯度60度以上に位置するため、オーロラオーバルに国全体がすっぽり入る、ということもありえるのです。ですから、寒空の下防寒具に包まれて何時間も夜空を眺めながら待たなくても、首都レイキャヴィークの街にいながら、または温泉にゆったり浸かりながらでもオーロラが見られる、という可能性も十分あります。事実私が今まで見た一番荘厳なオーロラの舞いは、4月初旬のイース ターの時期。レイキャヴィークの街から国際空港に向かって走るバスの中からでした。ふと何気なしに窓の外を見てみると、真っ暗な海上の空を緑色の巨大な光 が空を覆うかのようにゆったりと踊っていたのです。オーロラは気まぐれな妖精です。ふとこちらが目を向けるとぱっと現れたりするのです。

レイキャヴィークの街の上空を舞うオーロラ

ここでアイスランドでのオーロラ鑑賞のポイントをご紹介しましょう。

  • 肉眼で観察しやすくなるのは、日照時間が短くなる9月から3月ごろまで
  • オーロラはツアー中にだけ見られるとは限らないので、滞在中はマメに夜空を見渡すこと
  • アイスランドは1日のうちの天候が大変変わりやすいので、雨や曇りでも諦めないこと


オーロラ観測はある程度の根気と我慢強さが求められます。頑張った分だけ、見えたときの感動はひとしお!でも仮に出会えなくても、冬のアイスランドはみ なさんを裏切りません。アイスランド人の温かなもてなしを始め、雄大な自然、疲れを癒す温泉、またはおいしい魚料理などに満足してもらえることは間違えな しです。

なお、アメリカ航空宇宙局NASAの調査によると、2011年から2012年は太陽の活動周期が活発になるとのこと。オーロラが放つ神秘的な光の舞いを鑑賞できる可能性も高くなるのではないでしょうか。



(2011年3月 by P.)

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